【訴訟事例】店舗がBGMの著作権侵害に問われたら、どんなペナルティが発生するの?実例で解説
「お店で音楽を流すくらいなら、特に問題ないのでは?」
そう考えてしまう人もいるかもしれません。
しかし、店舗でBGMとして音楽を流す場合、家庭で音楽を聴くのとは扱いが異なります。
実際に、BGMを無許可で使用していた店舗に対して、著作権侵害を理由とした訴訟が起こされ、裁判所が損害賠償や使用停止を認めた事例があります。
ここでは、実際の裁判例を紹介しながら、
店舗BGMで何が問題になるのか
著作権侵害が認められるとどうなるのか
損害賠償はいくらくらいになるのか
音楽を流しているだけでも訴訟になるのか
店舗側はどうやって対策すればいいのか
について、できるだけ分かりやすくまとめます。
そもそも店舗でBGMを流すと著作権が関係する
まず知っておきたいのが、店舗で音楽を流すこと自体が、著作権と無関係ではないということです。
JASRACによると、市販されているCDなどを店舗のBGMとして流す場合、作詞・作曲者などが持つ著作権のうち、店舗で音楽を流すことに関係する「演奏権」が問題になります。
また、CDなどの市販音源をコピーして使う場合には、著作権だけでなく、実演家やレコード製作者などの著作隣接権も関係する場合があります。
つまり、
「買ったCDだから、お店で自由に流していい」
とは限りません。
家庭で個人的に音楽を楽しむ場合と、飲食店や美容室などで営業中の店内BGMとして利用する場合では、考え方が違います。
実際にあった「店舗BGM」の裁判
札幌の理容店でBGMの無断利用が問題になったケース
店舗BGMの著作権について紹介するとき、特に分かりやすいのが、2018年に札幌地方裁判所で判決が出た事件です。
JASRACは、札幌市中央区の理容店「Elfina」の経営者に対し、JASRACが管理する楽曲を無許可でBGMとして使用していたとして、著作権侵害の差止めと損害賠償を求めました。
裁判では、店舗側が継続してJASRAC管理楽曲をBGMとして利用していたことが認められ、JASRAC側の請求が全面的に認められました。
そして、無許可で利用していた期間について、3万1,000円を超える損害賠償が認められています。
これは、「音楽を流していただけなのに裁判になることがある」ということを示す、かなり分かりやすい実例です。
なぜ理容店が訴えられたの?
ポイントは、単に音楽を持っていたことではありません。
問題となったのは、営業している店舗で、JASRAC管理楽曲をBGMとして継続的に利用していたにもかかわらず、必要な利用許諾を得ていなかったことです。
JASRACの現在の案内でも、飲食店などでBGMを利用する場合の手続きが案内されています。
つまり、
CDを持っている
↓
自分のお店で再生する
↓
だから自由に使える
という単純な話ではありません。
「購入したかどうか」と「店舗での利用について必要な許諾を得ているか」は、別の問題として考える必要があります。
裁判になったら「音楽を止めれば終わり」ではない
ここも店舗経営者が知っておきたいポイントです。
著作権侵害が認められた場合、単純に「今後は音楽を流さない」というだけで終わるとは限りません。
JASRACによると、著作権侵害については、民事上、
侵害行為の差止め
損害賠償請求
不当利得の返還請求
名誉回復措置の請求
などが行われる可能性があります。
そのため、店舗側からすると、
「BGMを止めればいい」
だけではなく、
「これまで無許可で使っていた期間について、どのような請求を受けるのか」
という問題も出てきます。
実例② ライブバーではさらに大きな問題に
BGMとは少し種類が異なりますが、店舗で音楽を無許可利用した場合にどのような判断がされるのかを見るうえで、ライブバーの裁判も参考になります。
東京都八王子市のライブハウス「Live Bar X.Y.Z.→A」をめぐる事件では、店舗でのライブ演奏について著作権侵害が争われました。
東京地方裁判所は2016年、著作権侵害行為の差止めを認め、損害賠償請求についても一部認めました。
その後、知的財産高等裁判所で損害額などが改めて判断され、2017年には最高裁判所が上告を退け、知財高裁の判断が確定しています。
この事件では、店舗の経営者が演奏を管理・コントロールし、その演奏によって利益を得ていたことなどから、店舗側が著作権侵害について主要な責任を負うと判断されました。
ここから分かるのは、
「実際に音楽を演奏しているのはスタッフや出演者だから、店舗には関係ない」
という考え方が必ずしも通用するわけではない、ということです。
店舗の営業として音楽を利用しているのであれば、店舗側にも責任が生じる可能性があります。
実例③ 音楽を止めない場合、さらに厳しい措置になることも
さらに別の事例では、著作権侵害を続けていたクラブに対して、音楽を流すための機器について仮処分が行われたケースもあります。
JASRACの80年史によると、2018年には広島のクラブ「LEOPARD」に対して、店内のDJコントローラーやターンテーブルなどの機器を執行官保管とする仮処分執行が実施されました。
その後、この事件は和解しています。
もちろん、これは通常の店舗BGMとは異なる事例です。
ただし、
「著作権侵害を指摘されたら、無視してそのまま営業を続ければいい」
というものではないことは分かります。
店舗BGMの著作権侵害で考えられるペナルティ
実際の事例と法律上の仕組みを整理すると、店舗が無許可で音楽を利用した場合、主に次のような問題が考えられます。
| 起こり得ること | 内容 |
|---|---|
| BGMの使用停止 | 著作権侵害の差止めを求められる可能性がある |
| 損害賠償 | 無許可利用によって生じた損害について請求される可能性がある |
| 不当利得の返還 | 本来支払うべき使用料に相当する金額などが問題になる場合がある |
| 訴訟・調停など | 権利者側との話し合いで解決しない場合、法的手続きに進む可能性がある |
| 刑事責任 | 悪質なケースでは刑事責任が問題になる可能性もある |
JASRACは、著作権侵害について、民事責任だけでなく刑事責任が発生する可能性も案内しています。著作権法119条1項について、原則として10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方としています。
ただし、これは法律上の上限であり、店舗BGMの無許可利用をしたら必ずこの刑罰を受けるという意味ではありません。
実際の対応や責任の内容は、利用方法や期間、侵害の態様などによって変わります。
「数千円の使用料を払えばいいだけ」ではないところに注意
店舗BGMの著作権で意外と見落とされやすいのがここです。
例えば、
「BGMの使用料を払うのが面倒だから、とりあえずそのまま流しておこう」
と考えてしまうと、後から無許可利用が判明した場合に、単純に今月分の使用料を払えば解決するとは限りません。
実際に札幌の理容店の事件では、無許可利用期間について3万1,000円を超える損害賠償が認められています。
また、八王子のライブバー事件では、損害額についても裁判で争われ、最終的に知財高裁の判断が確定しました。
店舗経営者としては、
「毎月のBGM料金を節約するつもりが、後から別の負担が発生する可能性がある」
という点は覚えておいたほうがよいでしょう。
じゃあ、店舗BGMはどうすればいい?
では、店舗ではどのように音楽を流せばいいのでしょうか。
一番分かりやすいのは、店舗での利用を前提としたBGMサービスを利用する方法です。
JASRACでは、JASRACと利用許諾契約を締結している音源提供事業者について一覧を公開しています。
その一覧に掲載されている事業者からBGM音源の提供を受けている場合、事業者側が店舗に代わってJASRACへBGMの著作権使用料を支払うことについて合意されています。
つまり、店舗側で一曲ずつ著作権について確認するよりも、
「店舗で使うことを前提に提供されているBGMサービスを利用する」
という方法が分かりやすいわけです。
SpotifyやApple Musicなら大丈夫?
ここも店舗BGMではよくある疑問です。
普段スマートフォンで音楽を聴いていると、
「Spotifyを契約しているから、そのアカウントを店でも使えばいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、一般向けの音楽配信サービスは、個人で楽しむことを前提とした利用条件になっている場合があります。
そのため、
個人向け音楽配信サービスを契約している=店舗BGMとして自由に使える
とは考えないほうが安全です。
店舗で音楽を流す場合は、著作権だけでなく、サービス側の利用規約や音源に関する権利も確認する必要があります。
「無料BGM」なら何でも使えるわけではない
もう一つ注意したいのが、インターネット上にある「無料BGM」です。
「無料」と書いてあっても、
個人利用のみ
商用利用不可
店舗利用不可
クレジット表記が必要
別途ライセンスが必要
など、利用条件が設定されている場合があります。
したがって、
「無料でダウンロードできたから、お店で流しても大丈夫」
とは限りません。
店舗で使用するなら、必ず利用規約やライセンス条件を確認しましょう。
らくネットのような店舗向けBGMサービスを利用する方法も
「著作権のことを毎回調べるのは大変」
「お店の雰囲気に合うBGMを簡単に流したい」
という場合には、店舗利用を前提としたBGMサービスを選ぶ方法があります。
例えば、らくネットは店舗向けのインターネットBGMサービスで、ジャズ、ボサノバ、カフェ系、ヒーリング、ポップスなど、店舗の雰囲気に合わせて選びやすいチャンネルが用意されています。
こうした店舗向けBGMサービスを利用するメリットは、単に音楽を聴けることだけではありません。
「お店でBGMとして使う」ことを前提にサービスを選べる
という点も重要です。
もちろん、具体的な利用条件や権利処理については、それぞれのサービスの最新の案内を確認してから利用することが大切です。
店舗BGMの著作権で失敗しないためのチェックリスト
最後に、店舗で音楽を流しているなら、次の項目をチェックしてみましょう。
□ 個人向け音楽配信サービスをそのまま使っていないか
SpotifyやApple Musicなど、普段個人で利用しているサービスを店舗で使う場合は、店舗利用が認められているか確認しましょう。
□ CDを買っただけで自由に使えると思っていないか
CDを購入したことと、店舗でBGMとして利用するための権利は別の問題です。
□ 無料BGMの利用規約を確認しているか
「無料」という言葉だけで判断せず、商用利用・店舗利用が可能か確認しましょう。
□ 店舗向けBGMサービスを利用しているか
店舗での利用を前提としたBGMサービスなら、個人向けサービスよりも店舗BGMとして利用しやすい場合があります。
□ BGMサービスの利用条件を確認しているか
サービスによって利用できる場所や音源、契約条件などが異なるため、契約前に最新の利用条件を確認しておきましょう。
まとめ|店舗BGMは「知らなかった」では済まないことも
店舗BGMの著作権というと、少し難しい話に感じるかもしれません。
しかし、実際には札幌の理容店のように、店舗でBGMを無許可利用していたことを理由として訴訟になり、損害賠償と使用停止が認められた実例があります。
また、ライブバーなどの事例では、差止めや損害賠償について裁判で争われ、最終的に裁判所の判断が確定したケースもあります。
店舗BGMについて大切なのは、
「音楽を流せるか」ではなく、「その音楽を店舗で適切に利用できるか」
を確認することです。
特に、
個人向け音楽配信サービス
購入したCD
インターネット上の無料BGM
動画サイトの音楽
などを店舗で使う場合は、それぞれ利用条件が異なります。
「とりあえず流してみる」のではなく、最初から店舗利用を前提としたBGMサービスを選ぶほうが、著作権について余計な心配をせずに済みます。
毎日営業する店舗だからこそ、BGMも「安く済ませる」だけではなく、安心して長く使える方法を選ぶことが大切です。