【実例で解説】店舗がBGMの著作権侵害に問われると、どんな罪に問われるの? キャバクラ店ピアノ生演奏事件(2014年)|「生演奏なら大丈夫」ではなかった実例

2026/09/23

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キャバクラ店ピアノ生演奏事件(2014年)|「生演奏なら大丈夫」ではなかった実例



店舗BGMの著作権問題を考えるうえで、非常に分かりやすい裁判例があります。

それが、**2014年に東京地方裁判所で判決が出された「キャバクラ店ピアノ生演奏事件」**です。

この事件では、東京都内のキャバクラ3店舗で、ピアニストによる生演奏が行われていました。

店舗側は、ピアノ演奏について、店内の雰囲気づくりや演出の一部という趣旨の主張をしていましたが、裁判所は、営業のために不特定多数の客に聞かせる目的で行われた演奏について、著作権侵害を認めました。

つまり、

「CDや配信音源を流しているわけではなく、ピアニストが生で演奏しているから著作権の問題はない」

という考え方は通用しなかったわけです。




どんな事件だったの?

事件の舞台となったのは、東京都内で営業していたキャバクラです。

店舗ではピアノが設置され、業者から派遣されたピアニストが、来店した客に聞かせる目的で楽曲を演奏していました。

著作権管理事業者側は、店舗で演奏されていた楽曲の中に、自ら管理する音楽著作物が含まれていることを確認。

そこで店舗側に対して、

  • 著作権侵害にあたる生演奏の差止め

  • これまでの無許諾利用についての損害賠償

などを求めて提訴しました。

裁判では、単に「ピアノが店内に置いてあった」ということではなく、営業のために実際に楽曲を演奏していたことが問題になりました。




店舗側は「演出の一部」と主張

この事件で特に興味深いのが、店舗側の主張です。

店舗側は、ピアノ演奏について、音楽そのものを提供することが営業上の目的ではなく、店内の雰囲気づくりや演出の一部であるという趣旨の主張をしていました。

また、演奏された曲についても、ジャズとしてアレンジしたり、演奏者がアドリブを加えたりしているため、元の楽曲とは別の新しい著作物であるという主張もしていました。

しかし、裁判所はこうした主張をそのまま認めませんでした。

調査によって演奏曲目が確認されていたことや、演奏者の説明などから、原曲そのまま、あるいは原曲を編曲した形で演奏されていたと判断。

そのため、元の著作物についての著作権が問題になると判断しました。


「生演奏」でも著作権の対象になる

ここが、この事件から店舗経営者が知っておきたい一番重要なポイントです。

著作権法上、音楽を「演奏」することには、著作権者が持つ演奏権が関係します。

JASRACも、音楽を演奏する場合には演奏権について利用手続きが必要になると説明しています。店舗で市販CDをそのままBGMとして流す場合にも、店舗で音楽を流すことについて演奏権が関係します。

また、JASRACは現在も、バーやレストランなどで行われる生演奏について、店舗での演奏利用に関する使用料の仕組みを案内しています。

つまり、

CDを再生する → 演奏権が問題になる

だけではありません。

ピアニストがその場で演奏する → これも演奏権が問題になる

ということです。


「ピアノは店内のインテリア」という主張も認められなかった

店舗側は、店内に設置されたピアノについて、音楽によって直接利益を得るためというより、インテリアとしての意味合いが強いという趣旨の主張もしていました。

しかし、裁判所は、実際にピアニストが派遣され、客に聞かせる目的で楽曲が演奏されていたことなどを踏まえて判断しています。

ここから分かるのは、

「BGMはあくまで雰囲気づくりだから著作権とは関係ない」

とは単純には言えないということです。

むしろ店舗では、音楽そのものを商品として販売していなくても、店内の雰囲気やサービスの一部として音楽を利用していることがあります。

その場合でも、音楽の利用方法によっては著作権の手続きが必要になります。


3店舗に対して損害賠償と演奏差止め

裁判所は、3店舗について著作権侵害を認め、店舗ごとに生演奏の差止めや損害賠償を命じました。

判決文を見ると、例えば「GINZA CLUB CHICK」については、指定された楽曲を店内のピアノで生演奏してはならないとし、469万2,470円の支払いを命じています。

また、別の店舗については約715万円、さらに別の店舗については約693万円の損害賠償請求が争われています。判決では、それぞれについて請求の一部が認められています。

したがって、「約1,570万円」という数字だけを単純に「3店舗に対する判決額」と書くより、

「3店舗について多額の損害賠償が争われ、店舗ごとに演奏差止めと数百万円規模の支払いが命じられた」

と説明するほうが、判決内容に忠実です。


この事件で何が問題になったのか

整理すると、ポイントは次の4つです。

ポイント裁判で問題になったこと
生演奏CDや配信音源ではなく、ピアニストによる演奏でも著作権が問題になった
店舗の営業不特定多数の客に聞かせる目的で演奏していた
演出目的「店内の雰囲気づくり・演出だから」というだけでは著作権問題を回避できなかった
損害賠償無許諾利用について、使用料相当額などを基礎として損害賠償が認められた



「BGM」と「生演奏」は同じ手続きなの?

ここは注意が必要です。

店舗で音楽を利用する場合でも、利用方法によって必要な手続きは変わります。

JASRACの現在の案内でも、店舗などで継続的にBGMを利用する場合のオンライン申請が用意されていますが、生演奏は「BGMオンライン申請」の対象外として明記されています。

つまり、

店舗でCDなどをBGMとして流す場合

と、

店内でピアニストやバンドが生演奏する場合

は、同じ「音楽を使う」という括りでも、利用形態が違います。

生演奏を行う店舗は、BGMの手続きだけで済むと考えず、実際の利用方法に合った手続きを確認する必要があります。


「アレンジして演奏すれば大丈夫」でもない

この事件では、演奏者がジャズ風にアレンジしたり、アドリブを加えたりしていたことも争点になりました。

しかし、裁判所は、原曲そのままの演奏や、原曲を編曲した二次的著作物としての演奏が含まれていると判断しました。

そのため、

「原曲をそのまま弾いていないから別の曲」

とは必ずしも言えません。

店舗で有名曲などをアレンジして演奏する場合も、著作権について確認しておく必要があります。


この裁判から店舗経営者が学べること

この事件を店舗BGMの観点から見ると、非常に重要な教訓があります。

それは、

「音楽をどう使っているか」が重要であって、「BGMだから」「生演奏だから」「店の演出だから」という理由だけで著作権の問題がなくなるわけではない

ということです。

特に、

  • 店内でピアノを弾く

  • スタッフが歌う

  • バンドを呼んで演奏する

  • ライブを開催する

  • カラオケを利用する

  • CDや音楽配信サービスをBGMとして流す

など、音楽の利用方法によって必要な手続きが変わります。

JASRACも、店舗などでのBGM利用と、生演奏などのBGM以外の利用を分けて案内しています。


店舗BGMなら「生演奏じゃないから安心」とも限らない

この裁判はピアノの生演奏がテーマでしたが、だからといって、

「うちはCDやネット配信のBGMだから関係ない」

ということでもありません。

JASRACは、店舗で市販CDをそのままBGMとして流す場合にも、店舗で音楽を流すことについて演奏権が関係すると説明しています。

一方、市販音源をコピーして使用する場合には、著作権だけでなく、実演家やレコード製作者などの著作隣接権も関係する場合があります。

だからこそ店舗BGMでは、

「何の音楽を使うか」だけでなく、「どのような方法で使うか」

まで確認することが大切です。


まとめ|「店内の演出」でも著作権の対象になる

2014年のキャバクラ店ピアノ生演奏事件では、東京都内のキャバクラ3店舗で行われていたピアノ生演奏について、著作権侵害が争われました。

東京地方裁判所は、営業のために不特定多数の客に聞かせる目的で行われた演奏について著作権侵害を認め、店舗ごとに演奏差止めや損害賠償を命じました。

この事件で特に重要なのは、

「生演奏だから大丈夫」ではなかった

という点です。

また、

「音楽はあくまで店内の演出だから」

という理由だけで著作権の手続きを省略できるわけでもありません。

店舗で音楽を利用する場合は、BGMなのか、生演奏なのか、カラオケなのか、その他の利用なのかによって必要な手続きが変わります。

これから店舗を開業する人や、すでに店内で音楽を流している人は、

「この音楽は店で使って大丈夫なのか?」

を一度確認しておくと安心です。

特に毎日の営業で使う店舗BGMなら、個人向けの音楽サービスをそのまま利用するのではなく、店舗での利用を前提としたBGMサービスを選ぶという方法もあります。

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